こんにちは。獣医師のわたはる(twitter)です。
動物病院で犬猫の診療をしながら、自身の事業を展開したり、LGBTなどのNPO法人のお手伝いをしています^^
今回は、獣医師の多様な働き方についてお話しします。
獣医師の働き方は、いろんなサイトや書籍、SNSでの発信でご存知の方もいらっしゃるかと思います。
しかしながら、私は 小動物臨床→企業(小動物医療の研究、動物病院の経営、データ分析など)→行政獣医師としての地方公務員 → 起業、業務委託 といった、さまざまな経験を経ています。
そんな私から、現場の目線を添えて、獣医師としての働き方や最後に今後の獣医師として働くのに必要なものをお話しします。
はじめに:獣医師の活躍の場は多種多様
獣医師
- 臨床獣医師
- 臨床獣医師とは、動物の診療を行う獣医さんです。臨床獣医師は、大きく3つの分野があります。
1:犬猫を始めとした動物病院だけでなく、鳥類や爬虫類などのエキゾチックアニマルも含む小動物臨床
2:牛や豚などの畜産動物の診療を行う、大動物臨床
3:水族館や動物園などの展示動物を対象とする臨床
- 企業獣医師
- 企業獣医師とは、いわゆる聴診器を持たずに働く人たちです。獣医師でありながらサラリーマンです。基本的に、獣医師という資格しかできない仕事や資格によって企業に箔が付く場合のために雇われます。
※ ここでは、企業で行なっている動物病院等の診療所を除きます。
1:論文の翻訳や薬事の仕事など、学術的な役割
2:ペットを対象としたサービス(ペット保険やフード、その他商品)における獣医師
3:製薬会社などの営業、MRなど
4:製薬会社等の実験動物の管理
5:食品製造企業における食品衛生管理員
- 研究獣医師
- 研究獣医師とは、さまざまな場所で活躍します。各勤め先によって求められてくるものも違ってきます。例えば、企業における研究開発は商品やサービスの開発と密接であるため、研究成果でもたらせられる利益をの効果等が期待されます。
1:大学教員(臨床分野、生物学、遺伝学、疫学など)
2:企業における研究開発
3:公務員分野での研究獣医師
4:企業における受託検査(こちらは、企業に分類されるものかもしれません)
- 公務員
- 公務員には、獣医師しかできない仕事が存在し、ある一定数は毎年募集されます。
内容としては、感染症などの外からの侵入を防ぐ防疫部分であったり、人の食品や衛生面を管理するための役割を担います。※ みなさんが毎日食べている食品に付いている食品表示も、獣医師が見回ったりしてるんです。
1:国家公務員(農林水産省や厚生労働省、空港等の検疫など)
2:地方公務員(畜産系、研究分野、衛生管理などの保健所など)
やりがいはNo1!??動物臨床獣医師
皆さんは、獣医師といえば犬や猫の動物病院の獣医さんを思い描くでしょう。実際に、農林水産省のデータで見ると約4割が犬や猫をはじめとする動物病院で働く獣医師です。
一方で、”動物臨床”の中には、牛や豚をはじめとした大動物の分野、水族館や動物園などの展示動物を診る分野もあります。この分野は、約13%の獣医師が携わっています。
私は、小動物の経験しかないのですが、小動物と大動物、展示動物の違いとしては顧客でもある飼い主(持ち主)が、診療対象となる動物に対して”ペットとしての扱い”、”商品としての扱い”のどちらであるかというのが大きな違いです。
※ もちろん、小動物臨床の中にはブリーダーやペットショップ、警察犬の訓練学校などの事業者を対象とした診療も存在するため、あくまでも大多数の分け方としての違いです。
どちらにせよ、小動物、大動物、展示動物のいずれも診療が基本的な仕事になるのですが、診療相手(動物)とお金を払う顧客(飼い主)が違うサービス業に近いものに当たります。基本的には、診療技術というよりもコミュニケーション能力や相手から問題や課題を聞く力が試されたり、人数の少ない環境での仕事なため人間関係が濃く表れる仕事になります。
獣医師を目指す方の大多数の方が、臨床獣医師をイメージして入ってくるため、「好きなことを仕事に」という働き方を体現した形です。中には、小さな頃の夢を叶えることができて、とても
ポイント
- 獣医師という名の通り動物の命を扱う診療分野として、やりがいはNo1と言えるでしょう。「好きなことを仕事に」という現代の働き方としても、最先端を行ってるのではないでしょうか。
- やりがいがNo1な一方で、給料は世間が思っているほど高くはありません。小動物臨床においては勤務獣医師としては300~600万程度でしょう。雇われ院長やある程度の権力を持ったとしても1000万円を超えることは大抵ありません。(開業した先生の中では、1000万円を超えることもありますが、初期の設備投資を考えると利益が出てくるのは数年後というイメージです。)
- いわゆる「先生」という士業ですので、人から尊敬される(されているかは、不確かですが)ような立場です。結構ファンの方も増えたりして、いい気分は味わえます。
- 体力仕事、勤務時間はその日によって変わることも多いです。約束していたデートが、緊急の患者や手術で急遽キャンセルということも少なくはありません。基本的に立ち仕事、体重10kg以上の動物等を抱えたりすることもあります。新卒獣医師の頃は、毎日背中や足が痛かったです。
視野の広がりがある企業獣医師
続いては、いろんな企業で務める獣医師職です。さまざまな分野があり、ペットグッズやWEBサービスの企業、ペット保険などの金融業界、ペットショップや動物病院などを運営する臨床業界、薬事などのアカデミックな学術や実験動物の管理などの薬剤関連の企業などが挙げられます。
基本的に、獣医師としての資格を使って入社する場合は、獣医師としての資格が必要な仕事となります。(当たり前のことですが)
なので、かっこよく新規事業の企画をプレゼンしたり、自身のやりたいことをやるというよりも、初めは求められている資格を使った役割をこなしていくという感じです。
私は、あるペット関連の企業に勤めていた期間で、どちらかというと人を動かし、自身の思う企画を提案したり進めていく立場にありました。この時にやったことは、会社の取り組みの1つである社員全員がA4の紙1枚に何かしらのまとめを作る月一業務を生かし、”毎日論文や医療業界の動向を調査し、勤めている会社がどのような方向を見るべきか”を提出し続けました。
周りがめんどくさがっていた業務を、チャンスであると真剣に取り組み、さらに会社が求めていることを企画し提出した結果、頂けたポジションだと考えています。
企業に勤めた際に獣医師として求めるものは色々あるかと思いますが、もしもある程度ビジネスとして活躍するポジションを得たい場合は、何かしらの獣医師以外のスキルを身につけることが必要です。
ポイント
- 企業の規模によっては、獣医業界という狭い環境ではなく他業種や他職種との関わり合いが増えます。配置される部署次第ではありますが、獣医業界だけでなく、あらゆる業界のトップ層や経営層とお話しすることができるチャンスを得ることもあります。
- ペット関連の企業や、獣医師を必要とするプロジェクトを動かす企業では、必ずと言っていいほど、獣医師がプロジェクトメンバーにアサインされる形になります。多くの人数が必ずしも選ばれるわけではありませんが、社内での人脈構築やアピールがうまければ、それなりなポジションを取れるでしょう。
- あくまでも獣医師(専門家)という形での雇い方になると、(言葉を選ばずに言うと)企業の駒としての要員になります。”獣医師の意見は必ずしも通る”というよりも、”獣医師の賛成意見が欲しい”という、嫌でも首を縦にふるしかない状況もあります。
- 臨床獣医師出身者の方々などは、企業について”土日休める!”と思い込んでいる方が多いです。私が、面接官として企業で獣医師(臨床出身者の方)の面接をした際には、”ぶっちゃけ土日休みたいんですよね。”と言われたことは少なくありません。残念ながら、企業においても土日出勤や休日出勤、残業は当たり前のようにあります。(もちろん企業によります。)
- 企業においては、案外他の企業や取引先へのコミュニケーション能力が必要であると思われがちですが、一番大事なのは、”社内政治”におけるプレゼン能力です。コミュ力が高くても、社内でいいポジション取れるわけではなく、いかに自身が会社にとって必要な人材か思ってもらうようにすることが大事です。
意外とコミュ力が必要な研究分野
研究分野では、大学教員から企業、公務員の中にも獣医師は存在します。もちろん研究の内容としては、動物臨床のことや薬品について、その他免疫や遺伝子など人間に関わることまで広く網羅します。
研究分野では、所属する機関によって目指す方向性も大きく違います。
まずは、どのように研究を始めるのかについてです。
大学などの公的機関では、いかに世の中に必要なものであったり、貢献する内容であったりで、国からお金をいただいて研究することが多いです。
もちろん企業の中で研究を行なっている研究分野も同じく、会社や共同機関から予算を引っ張って研究に取り組みます。
医療分野では、Amedと言われる国立研究法人 日本医療研究開発機構と呼ばれる機関に、実際に研究したい内容をプレゼンしお金をいただいて研究することがあります。
ここで、国や企業からどうやってお金を引っ張るか。というのが大事になってきます。
公的な機関であれ、企業であれ、そのお金を出す大元が必要としていること(メリットとなること)以外には、お金は降りてきません。また、お金を出す側との信用信頼も必要になってきます。
案外、研究者といえば、”変わり者”、”友達いない”、”社会不適合者”といったイメージがある方が多いでしょう。しかしながら、大学でも企業でも、立場が上である方や名の知れた研究者の方々は、どちらかというとコミュ力が高く、理解力も高く、そしてプレゼン力が高い方が多かったです。
一番報われない仕事は、公務員!??
まずは、獣医師の中には公務員という働き方があります。思いつくのは、保健所の動物を殺処分する!などといったイメージが湧いてくるかもしれませんが、他にも食品や美容関連、温泉や旅館などといった事業者の衛生管理を行う分野や、人の感染症関連、あとは食品検査などを行なっています。
仕事の内容としては、各行政の機関のHPを検索してみてください。
公務員の働き方といえば、国民の税金で悠々と暮らしている。と思われる方も多いでしょう。もしくは、定時で上がれるというイメージも多いのではないでしょうか。
実際は、多くの公務員の部署は、残業代もつけられないくらいのブラックであることがあります。土日出勤だってあります。
一方で、給料はなんだかんだでまぁまぁかなという感じです。各自治体によっては、”獣医師手当”のような獣医師の人(獣医師業務の人)のみに与えられる別途の給与体系があったりします。
また、公務員は給与が年齢ごとで定まっていることもあるため、他の臨床や企業から転職しても大体年齢に合った給与をもらえます。結構、中途の獣医師も採用していることが多く、地方では試験を受ければほぼ受かるのでは?といったところもあります。
仕事は、法律や条例に沿ったものが多く、常に”国民の福祉へ”という目線で動くことになります。国や都道府県の動きを把握できたり、行政の裏側を知ることができるもので、結構やりがいがある仕事です。
しかしながら前述の通り、電話や窓口での苦情も少なくはなく、自身がやっていることに対する感謝や結果が不透明な部分も多いため、心を壊していく人も多い職業です。
ポイント
- 給料、福利厚生は圧倒的な安定した職業。ママさんや育休予定のパパさんにももってこいの職業かもしれません。
- あくまでも公共の福祉に対する職業であり、法律に則って仕事を行います。災害や非常事態などの時には、最前線に立つ必要もあるので、日本がピンチな時は忙しく、平和な時は割とゆったりとしている。という部署が多いです。
- 仕事で感謝されたい。という方には、少し心が折れる職業です。公共の福祉に尽くしているため、公務員の仕事は、国民からやって当たり前だと思われることが多いです。むしろ、なんでやらないんだ。ということの方が多いかもしれません。時には、同期の中に心が疲れて休暇を取る人も一定数います。
- 色々、大変な面も多い職業ではありますが、獣医師として一番”獣医師としての存在意義”が輝く職業かなと感じます。臨床や企業では、どうしても利益や売り上げといったお金がちらつくことが多い面もあり、自身の獣医師としてのあり方に不安になることも多いですが、公務員の場合は公共の福祉という、利益よりも優先事項があります。
- 案外、地方や国の議員さんとも接触することも多いため、縦社会な部分が多いです。公務員で上に上り詰めるためには、ある程度の学歴(出身大学)や議員、上司などとのコミュ力の高さが必要だったりします。
番外編)獣医師の仕事以外で働くということ
ここでは、獣医師のあらゆる職業について、大体の職業を体験したわたはるなりの感想や意見を混ぜながらご紹介してきました。
獣医師というものは、獣医の資格を使った働き方以外でも働くことは可能です。
私のように起業をしてビジネスをやっている方、広告代理店やIT関連の企業に勤めている方、方向性は無限大にあります。
意外と、そこのビジネスで獣医師の資格が役に立ったりすることもあります。
私は、あらゆる業種を通じて、今後も獣医師の働き方がもっともっと多様に渡り、世の中に獣医師の素晴らしさを伝えたいなと常日頃考えています。